曼珠沙華は俳人に好まれる秋の季題である。その季語の本意を平井照敏は、『新歳時
記』で曼珠沙華は様々な名で呼ばれる。『滑稽雑談』に「死人花とは、葉枯の花なれ
ば、わかれの花となまなり死人花といふ。捨子花とは、葉葉に別るるの謂なり。かや
うに哀傷の名に転じて、その赤きを呼びて、”まんじゆ沙花”といふか」とある。墓地
などに多く咲き、秋彼岸ごろ咲くので、よけいに忌みきらわれたわけである。と書い
ている。だが、その花の艶やかさから様々な取り合わを行い、詠まれている。
曼珠沙華どれも腹出し秩父の子 金子 兜太
朝潮がどっと負けます曼珠沙華 坪内 稔典
ゆらゆらと回想のぼるまんじゅしゃげ 榊原 風伯
曼珠沙華人ごゑに影なかりけり 広瀬 直人
砂に陽のしみ入る音ぞ曼珠沙華 佐藤 鬼房