一門彰子さんの「四季吟詠句集36」が、6月30日に発刊された。
この句集は「俳句四季」で特選を得た作家による合同句集である。
「俳句と私」と題するエッセイと俳句57句が掲載されている。
冒頭の句「鳥の巣がくすぐつたくて嬉しい木」に冨士真奈美氏が
特選の選評を「鳥の巣がくすぐつたくて嬉しい木。なんて可愛い木でしょう。その木心っていうのかしら、思わず笑いながら泣きそうになりました。…(以下略)」
と書いている。この句に限らず一門さんの巧みな言葉選びから醸し出す独自の世界観が感じられる。エッセイの中でも「同じ言葉を使って俳句を書けば、言葉は化ける。言葉が本来の魂を取り戻し、言葉は言葉を裏切らない。そんな上手く化けてくれる言葉に化かされて、日常から少し離れたところで俳句に遊ぶ。…」
朝寝してうすき詩集をひらく夢
貝図鑑ひらく二月を乾きゐて
夕暮るる一人静を見てゐるは
こそばゆき程に日が差しスイートピー
西行の恋情レタスは玉を成し
感情を見せぬ箸先ところてん
黙読は野をゆく風に似て真夏
ソーダ水少女の質問が綺麗
すれ違ひざまの目配せ秋の蛇
白桃にさざ波ほどのももの色
やさしさの裏側を見せ秋の蝶
詩のような少年がゐる冬菜畑
長生きの途中たいくつ喧嘩独楽
寒鴉村のはづれの気の合ふ木