今週の10句(1月第三週)
終戦日口にざらつくかりん糖(戦争の嫌な思い出はいつまでもざらつく) 富澤秀雄 ゆめたがえかんのんさまや秋蛍(夢違観音は悪夢を善夢に変えるとか…) 一門彰子 庭手入れおえた夜も聞く虫の声(庭の手入れの後の虫の音は一際美しい […]
終戦日口にざらつくかりん糖(戦争の嫌な思い出はいつまでもざらつく) 富澤秀雄 ゆめたがえかんのんさまや秋蛍(夢違観音は悪夢を善夢に変えるとか…) 一門彰子 庭手入れおえた夜も聞く虫の声(庭の手入れの後の虫の音は一際美しい […]
花すすき風の呆けるデンデラ野(デンデラ野は遠野の姥捨の地。すすきも呆けるよな) 富澤秀雄 黙読の耳やわらかく草雲雀(黙して書に耽る折は耳をやわらかくして虫の音を) 一門彰子 青葉木菟と目の合ってより不眠症(梟とは目を合わ
金平糖噛めば銀河の音のして(金平糖を噛む音は銀河の瞬きに似ているような) 富澤秀雄 片言の俳句と言えど林檎真っ赤(俳句は十七音故のもどかしさを林檎の赤に喩) 一門彰子 明日あるをふといぶかりて秋桜(明日は必ず訪れるものを
仏前のあらぬほう向く扇風機(扇風機に仏心はなく勝手気ままに) 富澤秀雄 林檎むく他言無用のしずかな刃(刃物を前に他言無用と言われれば抗えず) 一門彰子 筆跡で浮かぶあの顔秋深む(人それぞれの書き癖があり、それとわかる関係
咲き満ちて沸点となる曼珠沙華(曼珠沙華の開き切った時の凄まじさ) 富澤秀雄 やさしさの葉書いちまい秋の蝶(秋の蝶がひらりと舞い飛ぶ様は葉書めく) 一門彰子 十月の切手三枚貼り足して(淋しさは書く手紙に切手張り足すほど濃い
ビニール傘くらげ気分の雨中泳(雨がビニール傘を打てばクラゲの気分の歩) 富澤秀雄 梅雨に入る薔薇という字の厚ぼったさ(薔薇の字は本当に厚っぽく梅雨の鬱) 一門彰子 素揚げする新馬鈴薯の音と香と(ぱちぱちと弾ける音はいかに
自叙伝を書いてるつもりかたつむり(かたつむりの歩みは自叙伝のめく) 富澤秀雄 どくだみや癒やしの句座に連座して(句座はそれぞれの雰囲気を持つ) 一門彰子 孔雀サボテンだあれも来ない日曜日(折角の孔雀サボテンを見せられない
なんじゃもんじゃ咲いて老人反抗期(反抗期は若者だけではないのだ) 富澤秀雄 青春の涙腺脆し桜桃忌(太宰治の文学に酔いし頃を回顧して涙が滲む) 一門彰子 割り切って生きればいいよ葱坊主(自分自身にも言い聞かせているようだ)
忽然と現るものに蛇と虹(誠に蛇も虹も思いがけない時に現るものだ) 富澤秀雄 立ち位置と視点の相違羽抜鶏(羽抜鶏は己が姿を見んとあらぬ方を向く哀れ) 一門彰子 青水無月バス乗り継ぎて海の町(思い出の地を訪れるには、遥かな道
活き活きと空をくすぐる大噴水(活きよく空に吹き上げる噴水) 富澤秀雄 今生の二進も三進も(にっちもさっちも)かたつむり(かたつむりの歩みに自らの生き様を重ねて) 一門彰子 白藤の香り吸いたる鬼瓦(鬼瓦もきっと白藤の香気を