今週の10句(11月第1週)
ビニール傘くらげ気分の雨中泳(雨がビニール傘を打てばクラゲの気分の歩) 富澤秀雄 梅雨に入る薔薇という字の厚ぼったさ(薔薇の字は本当に厚っぽく梅雨の鬱) 一門彰子 素揚げする新馬鈴薯の音と香と(ぱちぱちと弾ける音はいかに […]
ビニール傘くらげ気分の雨中泳(雨がビニール傘を打てばクラゲの気分の歩) 富澤秀雄 梅雨に入る薔薇という字の厚ぼったさ(薔薇の字は本当に厚っぽく梅雨の鬱) 一門彰子 素揚げする新馬鈴薯の音と香と(ぱちぱちと弾ける音はいかに […]
自叙伝を書いてるつもりかたつむり(かたつむりの歩みは自叙伝のめく) 富澤秀雄 どくだみや癒やしの句座に連座して(句座はそれぞれの雰囲気を持つ) 一門彰子 孔雀サボテンだあれも来ない日曜日(折角の孔雀サボテンを見せられない
なんじゃもんじゃ咲いて老人反抗期(反抗期は若者だけではないのだ) 富澤秀雄 青春の涙腺脆し桜桃忌(太宰治の文学に酔いし頃を回顧して涙が滲む) 一門彰子 割り切って生きればいいよ葱坊主(自分自身にも言い聞かせているようだ)
忽然と現るものに蛇と虹(誠に蛇も虹も思いがけない時に現るものだ) 富澤秀雄 立ち位置と視点の相違羽抜鶏(羽抜鶏は己が姿を見んとあらぬ方を向く哀れ) 一門彰子 青水無月バス乗り継ぎて海の町(思い出の地を訪れるには、遥かな道
活き活きと空をくすぐる大噴水(活きよく空に吹き上げる噴水) 富澤秀雄 今生の二進も三進も(にっちもさっちも)かたつむり(かたつむりの歩みに自らの生き様を重ねて) 一門彰子 白藤の香り吸いたる鬼瓦(鬼瓦もきっと白藤の香気を
ビニール袋の金魚の不安持ち帰る(夜店で掬われた金魚は、袋の中できっと不安げ) 富澤秀雄 お地蔵の居眠り大事苔の花(お地蔵さんはまるで眠ってござる。苔に覆われているのに) 一門彰子 やさしさも貝も欠けたり春の浜(拾った貝の
言論の自由じゆうと油蝉(蝉の気持ちになれば、そうも聞こえる) 富澤秀雄 かの世への扉閉ざせり合歓の花(合歓の花が天上花に見えてくる) 一門彰子 風少し窓辺に二羽の秋の蝶(淋しい時に訪れる二匹の蝶は何を伝えに?) 古池明子
千年を受け継ぐ京の桜守(京都の桜の名木は桜守が歴史と共に受け継ぐ) 富澤秀雄 千代紙に鶴折る蝶折る春の雨(春の雨の情感を千代紙の鶴や蝶が織り成す) 一門彰子 初音遠しそれより遠し天の声(天国にいる夫の在りし日の声を聞きた
しゃぼん玉吹いてピエロの黙の空(おどけてみせるピエロの裏の貌) 富澤秀雄 夕桜かなしみ一つづつ消去(悲しみは一気に解消できぬ物花の一片寄せて) 一門彰子 口きかぬなら桜貝になりなさい(頑固な貝は困りもの人も亦然り) 西原
鬼やらい終えた神社の鬼ごっこ(節分を終えた神社に小鬼たちが遊ぶ) 富澤秀雄 かげひなたなき手のひらに雛霰(純粋な子どもの可愛い掌に雛あられ) 一門彰子 もう少し寝かせて日曜蟬時雨(日曜だから寝かせてよと蝉に言ってみたが)