芋のつる手繰ればわたしの本籍地(父の郷里の徳島の芋畑への郷愁)
富澤秀雄
屁理屈も理屈も鮮度栗の毬(ウイットに富んだ理屈も屁理屈も愉快)
一門彰子
古書店の螺旋階段小鳥来る(行きつけの古書店の螺旋階段を踏む音)
樋口由美
旅立つは小鳥さえずるある朝の(亡くなられた方への鎮魂の囀り)
古池明子
夕焼けに句会をまかせ深眠り(ゆうゆうと句会を楽しむ姿は眠りに似て)
政野すず子
自動レジ手とり足とり毛布買う(レジは全て自動化タッチ決済の世情を…)
三船多美子
保育所へどんぐり山の招待状(童話の1ページを繰るような楽しい句)
森川明美
名月を横切って行く白い杖(白杖の人の後ろにブルームーンが煌々と)
山口美野子
電球のボォーッと灯る獺祭忌(裸電球下で書に耽る子規が偲ばれる)
山﨑よしひろ
カラッカラの大気を削る蝉時雨(年ごとに夏の猛暑日が長くなる不安)
湯川千佳子