終戦日口にざらつくかりん糖(戦争の嫌な思い出はいつまでもざらつく)
富澤秀雄
ゆめたがえかんのんさまや秋蛍(夢違観音は悪夢を善夢に変えるとか…)
一門彰子
庭手入れおえた夜も聞く虫の声(庭の手入れの後の虫の音は一際美しい)
小林弘子
思い出を今宵どこまでつづれさせ(蟋蟀の音に思い出は果てなく蘇る)
田山嘉容
初秋や朝の空気のうすみどり(初秋の空気感を色彩で感覚的に捉えた)
圡田桂子
恩師の影街から丘へ夏うぐいす(師と嘗て訪ねた地を再訪してしみじみと)
名村幸子
里案山子長い一日夕風来る(案山子の夕暮れ時のほっとした瞬間)
西 幸子
抱き猫に子守唄など居待月(猫を愛おしみ子守唄など聞かせてみたき)
西田美智子
晩年の擂鉢の底晩夏光(擂鉢の底も年を経ると減り淋しくもなり)
延原ユキエ