月の夜をもそもそ話すだんご虫(だんご虫に変身したかのように…)
富澤秀雄
いわし雲胸の波止場へとどく文(長い間逢えず待ち焦がれる文…)
一門彰子
ソーダ水多少のほらを吹きながら(ソーダ―水の泡は、ほら話のよう消えて)
西原千津子
星月夜塗装の壁に触れたがる(塗りたての物につい触れたくなる衝動)
山口砂代里
紅葉狩大きなおにぎりひとつずつ(家族愛に溢れる大きなおむすび)
岸上紀子
故郷の飛蝗にメガネ奪われて(故郷はいつも飛蝗まで出迎えに来てくれる)
岡谷康子
おけら鳴く爪切るときはふと孤独(夜に爪を切る時の音に孤独感を…)
中森京美
紅葉山リュックと会話坂上る(リュックと会話しながら登る坂は楽しい)
岡田清子
石蹴って秋光の端乱しけり(秋光を乱すほどの小さな苛立ちは石に)
加藤隆子
寄木箱あければ波打つ芒原(寄木細工の複雑な仕掛けを解いて開けた時の気分)
木原由美子