凩に真向かう僕の流線形(背を丸めて凩の道を急いている)
富澤秀雄
励まして励まされゐる青木の実(青木の真っ赤な実に励まされ励まし)
一門彰子
助動詞に迷うペン先暮早し(俳句の推敲に於いて迷う助詞と助動詞)
西原千津子
ソリストの凍蝶現れてはばたけり(ソリストは凍蝶に化身して舞う)
山口砂代里
何気ない言葉のふふふ冬帽子(相手に対する感情の動きのふふふ)
岡谷康子
奈良は平ら京都は尖り秋の色(まさに歴史的風土も違いも山並も)
岸上紀子
冬の鵙甘い過去など捨てちまえ(冬の鵙の鋭い一声は甘えを払拭)
中森京美
落葉踏む音は続くよ寂しさも(落葉踏むは楽しくもあり寂しくもあり)
荒木ゆきこ
好物を譲り合いつつ鮟鱇鍋(鮟鱇鍋を突きながら好物を譲り合う仲間)
磯田硯涯
譲れない絵札あるらしかるたの子(童心を垣間見るような視点を詠む)
上西眞知子