山茶花のはららはららと物忘れ(山茶花の散り様はまさに物忘れような感覚)
富澤秀雄
マフラーに巻きこむ襟足と感情(マフラーを撒くのに感情までと飛躍して)
一門彰子
水切りして薔薇蘇る遺影の前(薔薇は水切りで甦れども死者はもう還らない)
圡田桂子
枝先にいも虫たたみに夫ごろり(枝先の芋虫と夫の寝姿を同一視してるようで愉快)
名村幸子
待ち人と春は静かに待つものよ(待春の心持は待ち人を待つ気持ちに似ている)
西 幸子
水引の金銀鶴亀どんど焼(豪華などんど焼のように思える。炎の色も華やか)
西田美智子
人見知り昼の蜜柑を撫でている(人見知りの蜜柑とは、如何なる蜜柑なのか?)
延原ユキエ
新春の午後のうたた寝とは豪華(新春早々のうたた寝は、桃源郷にいるような)
橋本昭一
寒の入りムニャムニャ病は胸にまで(ムニャムニャ病をムニャムニャ楽しんでいる…)
政野すず子
「おちつけ」と待つ救急車寒の朝(夫の急病に救急車を待つ焦燥感と安堵感の錯綜)
三船多美