折紙の四隅は直角鶴帰る(折り紙の角から生まれた鶴も天に放たれて帰る)
富澤秀雄
永き日のピアノはさざ波を語り(ピアノの音も時にはさざ波のように耳に届く)
一門彰子
寅さんのようにも成れずしゃぼん玉(寅さんのように自由に旅を続けたいが、弾ける定め)
西原千津子
修司の忌眼鏡似合う女の子(寺山修司のフアンは眼鏡の似合う可愛いい文学少女)
山口砂代里
花は葉に髪のおとろえ言い合って(衰えは足腰だけではなく髪の毛にも忍び寄る)
岸上紀子
水音はフォルティシモ花声はピアニッシモ(落花と水音を音楽用語で美しく表現した)
岡谷康子
酔う程に口先ばかり浅蜊ふく(閉じている浅利より多弁な方が時にいいかも…)
中森京美
春彼岸サウナルームの砂時計(サウナにある砂時計も春彼岸も遅々と時を進める)
橋本昭一
入院へ向かう車窓の泡立草(入院の日の心の不安や焦燥感を掻き立てる泡立ち草)
原 尚子
つかの間の母のまどろみ雛の家(雛祭りの準備に疲れた母親の安堵のまどろみ)
樋口由美