しゃぼん玉吹いてピエロの黙の空(おどけてみせるピエロの裏の貌)
富澤秀雄
夕桜かなしみ一つづつ消去(悲しみは一気に解消できぬ物花の一片寄せて)
一門彰子
口きかぬなら桜貝になりなさい(頑固な貝は困りもの人も亦然り)
西原千津子
しゃぼん玉星占師の窓に来て(自分の運命を星占いに委ねるしゃぼん玉)
山口砂代里
抱いて寝る本の中から蝶生る(大好きな絵本は毎夜蝶の夢を見るために抱く)
岸上紀子
真っ直ぐは子供の特権風光る(子供の言葉は無弱だが時には真実を付いて残酷)
岡谷康子
肩まろき京の山並み桜もち(京の東山六峰は誠になだらかで美しい稜線)
中森京美
古書店のレジは気まぐれ春の夕(古書店のレジ機は、突然止まったり動いたり)
小西清子
断捨離の進まぬ日々や桜咲く(断捨離は、思い出をなかなか捨てられぬもの)
小林弘子
ぼんぼりには父母の目差し雛飾る(亡き父母への思いをぼんぼりの灯りに見た)
田山嘉容