月の森俳句会

今週の10句(令和6年1月第1週)

啄木鳥のモールス信号キ・ヲ・キ・ル・ナ(最近の森林伐採に警告の声)

富澤秀雄

火恋し書架に「それから」「日の名残り」(幅広いジャンルの書を楽しむ秋の夜)

一門彰子

分校は徒歩で四キロ赤とんぼ(季語を活かした郷愁溢れる情景を描く)

西原千津子

雁来紅人は晩年ひとを見る(年を経るごとに人間観察が鋭く深くなる)

山口砂代里

石橋をゆっくり渡り冬が来る(石橋への足の触感と冬の皮膚感が重なる)

岸上紀子

葡萄食む足りない何か探りつつ(満ち足りないものを葡萄を食む感覚と合せた)

岡谷康子

恙なく生きた道のり尺取虫(しみじみと来し方を思っている人生達観の境)

中森京美

出家して隠元豆の弟子になる(思わず微笑がこぼれるユーモア溢れる1句)

延原ユキエ

袋小路の増える町並曼珠沙華(都市化が進む取り残された路地の景)

橋本昭一

秋空や病室白し生きている(生きてゆく自己の意思を強く白で表した)

原尚子